取材が終了した後に、たまたまスタッフさんの控え室を見せてもらった。そこには壁一面、「自分がなりたいビジョン」の絵が所狭しと飾られていた。すし華亭ののぼりを立てて荒波を越えていく舟の姿や、カウンターで鮮やかに寿司を握る様子など、各スタッフが思い描くビジョンが力強く、鮮やかに描かれていた。
「自己実現していくために、学び、成長する必要があります。経営は先代の教えを守り、寿司の古い伝統文化のよさを守りつつ、時代の流れの空気を感じて、新風を巻き起こしていく。新文化創造に会社一丸となって取り組んでいきたいんです。」
社員全員が常に大切に持ち歩く冊子がある。「商い」に対する奴寿司の根源となる内
容は、こんな時代だからこそやるべきことが詰まっている。常に学ぼうとする姿勢を忘れず、愚直に商売をする教えは、父である藤咲忠治氏のときから変わらない。冊子の末尾には、「大家族主義」ということばが1ページに渡り記載されている。社員すべて、またその社員の家族もすべて奴寿司という家に集う家族であり、物心共に豊かになっていこうという考え方だ。
寿司を通して、地域社会に貢献していくこと。大切なのは見えない根っこだと藤咲さんは言う。根は求めれば求めるほど深く、広く、とどまることなく伸びていく可能性がある。根に応じて幹や枝もしっかりと太く強くなる。結果、想いの花・実をつける。今ある現実はすべて自分が蒔いた種だとしっかりと肝に銘じている。そんな経営者の姿勢をとことん見せてもらった。